事務局からのお知らせ

事務局からのお知らせ

2019年度 修了式

新型コロナウイルスが猛威を振るい感染者が増え続ける中で、修了式を執り行うことができなかったのは大変残念なことでした。皆様に直接、修了証書と最後の奨学金をお渡しする予定でしたが、それも叶わずHP上でのご挨拶になりますが、皆様の健康・安全面を第一に考えてのことですので、どうかご容赦ください。

山口正栄記念奨学財団嘉数侑昇理事長より皆様へメッセージをお送りいたします。
「令和二年、如月最後の二十九日は、待ちに待った修了式が開催されるはずでした。
なぜ、待ちに待ったのか?
奨学生、OB/OG、財団関係者の皆様が、文字通り久しぶりに一堂に会し、修了生を祝しつつ、更にビブリオ・バトルなどを通して、互いの絆を深め合えるのではと期待していたからです。
昨年度から始まったビブリオ・バトルは、提出された原稿を見る限り、全体的に、着眼点、内容の深読みの度合い、など、料理から漫画関連まで多様性に富み、いかにも複数大学、複数専攻の理系学生達からなる、当財団の特色が現れていると思いました。一般に、ある事物に対して行う評論行為は、評論者の知的、感情的内面の表明とも見做せましょう。

個々人の自由選択書籍に関する評論と、その評論に関する関係者一同による討論ビブリオ・バトルは、参加者のある種意識のバリア解放、そして他者への理解に繋がる事が期待されます。OneforAll!、AllforOne!です。

ところで、バトルは立ち合い形式で行われてこそ臨機応変さが有り面白いのですが、今回は残念ながら、新型コロナウイルスのパンデミック化可能性故、結果としてバトルを含む全ての会場でのイベントを中止とせざるを得ませんでした。何故ならば会場が、不特定多数の人々が出入りする場所だからです。中止を決定したのは、一週間前でした。会場予定のホテルから開催可否の問い合わせが財団事務局にあり、早急に結論を出す必要がありました。当時世間はまるでコロナは他所ごとで、自分達は無関係だの風潮でした。しかし関口専務理事とも相談の上、君子危うきに近寄らずで、理事長として早々に中止の断を下した次第です。修了式での再会を楽しみにしておられた皆様、特に修了生の皆様には、真に申し訳なしの思いです。神家満事務局長に中止すべきと連絡した際、3年前に逝った山口正雄前理事長もきっと中止しただろう、と。

中止の経緯報告はさて置くとして、修了生の皆様、修了おめでとうございます。

率直に申し上げますが、新奨学生として採用された当初の皆様は、身体はともかく知識、メンタル、社会意識など全てが幼稚の塊の様相を呈し、これが我が国の高等教育機関に、国民の税金を使って育成している人材か?でした。最近上梓された、上杉朋史による、「西田信春ー蘇る死」の伝説的人物、新十津川出身、三十歳で拷問死した西田信春は、東大生時代に「果たして自分は国民の税金で学問、教育を受ける資格ありや無しや」の自問を日記に記しているのと対照的でした。しかし、採用後の皆様の様相変化には、論語に言う「後世畏るべし」を実感しています。新規採用以来の皆様の全面的な進化、進歩は目覚ましい事でした。一々具体例を示せませんが、かくも短期間で人は進歩するのか!です。しかし、しかしです。孔子には続きがあります。
「四十、五十にして、聞こゆること無きは、これ亦畏るるに足らざるのみなり」
いかにして「聞こゆる」ものになるのには、千差万別、種々の生き様がある事でしょう。財団関係者一同、皆様の以降の成長、進化を楽しみにしています。先ずは、文書ながら、恙無き修了おめでとうございます!」

令和2年2月29日 理事長 嘉数 侑昇

各賞の発表です。

JTS賞 国際学会 講評 松浦賢一様 株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア
JTS賞の選考について講評します。今年は6人の応募がありましたが、3つの観点で選考しています。
1.学会など、外部機関からの評価はどのようなものだったか?
2.国際学会に参加をとおして、本人にどれだけの学びがあったか?
3.今回だけでなく、今後見込まれる研究成果には、どの程度の社会貢献や産業応用があるか?

まずは水丸さん。歩きスマホをしている人の注意喚起をするロボットの行動についての研究ですね。サービスロボットというと、医療介護系が大きなマーケットとして期待されていますけど、こういう領域がもしかしたらつぎのブルーオーシャンかもしれません。

大貫さんの研究は、植物の生長に関するものと言っていいのだと思います。今の農業は工業化に向かうのがトレンドですが、そのトレンドに沿った期待できる研究だと思います。イスラエルまで行ったそうですが、異文化交流としても得るものが多かったのだろうと思います。

飯澤さん。Webページの閲覧を個人認証に使うという、非常に独創的なアイデアですね。パスワード方式脆弱だと言われて以来、これに代わる個人認証を各所で実験中ですがもしかしたら飯澤さんの研究が個人認証のスタンダードになるかもしれません。ハンブルグにはGoogleのエンジニアは来てましたか?会ってたらまた新しい展開があるかもしれないなと思いました。

大内さん。スマートスピーカーがらみのテーマで、これも最近のトレンドですね。日本語を対象に研究をしているようなので、国際学会で日本語を知らない人に説明するのは苦労があったのかなと思います。外国人がどの点に関心を持たれたのか気になるところですね。

つぎに山本さん。不勉強ですみませんが、負の磁化現象って初めて聞いたので、いろいろ調べてしまいました。それでちょっと思ったのは、この現象を何かの磁性材料と組み合わせたらこれまでにないセンサーとかデバイスを開発できるんじゃないですかね?

最後に平さん。地球内部という未知の世界へのアプローチですね。地震とか天候とかに関係する研究なので、社会的なインパクトはとても大きいですね。

エントリされた方は以上です。いずれも甲乙つけがたい研究発表で、全員にJTS賞をあげたいところなのですが、事務局長に、1人だけと念をおされてしまったので、選びました。最優秀賞は大貫瞳さんです。おめでとうございます。

●北海道大学理学院 大貫瞳

山口正雄記念賞 講評 鈴木恵二先生 ビブリオ・バトル選考委員長
今回は、原稿のみでの評価となったこと、とても残念でした。どの原稿も工夫を凝らして書かれおり、興味深く読ませていただきました。お薦めの本はどれも気になってしまいました。

特に各グループの代表となった原稿は、甲乙付けがたく、、、その中でも、今回は選考委員の先生方から、多数の支持を集めた辻岡君の「自然に学んだすごい!技術ヤモリの指から不思議なテープ」に関するビブリオ・バトル原稿を1位とさせていただきました。バイオミメティクスという聞きなれない分野を紹介する本として推薦するに留まらず、持続可能な社会と心豊かな社会への鍵として提案している点を評価しました。

●千歳科学技術大学 辻岡一眞
「自然に学んだすごい!技術ヤモリの指から不思議なテープ」

奨励賞
奨励賞はこの1年間当財団が開催する式典、交流会、親睦会に積極的に参加され、近況報告等、奨学生としての責務を非常によく果たし財団運営にご協力いただいた奨学生に贈られます。
●北海道大学総合化学院 伊月勝信
●北海道大学理学院 平享
●千歳科学技術大学 辻岡一眞
●北海道大学大学院 水丸和樹
●北海道大学理学院 山本将隆

受賞された皆様大変おめでとうございます。
JTS賞(5万円)、奨励賞(1万円)の賞金は奨学金と共にお振込みさせていただきます。表彰状および山口正雄記念賞(腕時計)の目録はそれぞれ修了証書と共にお送りいたします。楽しみにお待ちください。

修了される皆様へ
2年間ご一緒させていただき毎回楽しく近況報告やコメントを読ませていただきました。交流会では多くの奨学生が夜を徹してグループ活動を行ってくださいました。皆様の成長を直に見させていただき大変有意義な時間でした。当財団の趣旨を良く理解し、地方から足をはこんでくださった方、インターンシップや就職活動を抜けて参加してくださった方、皆さん学業と奨学生としての活動を両立するために努力を重ねて下さったことと思います。

今年は去年の教訓を生かして非常に面白いビブリオバトルを行う予定でしたので、何とも残念ではありますが、それはそれでこれも記憶に残る修了式だったのではないでしょうか。

2年間、本当にお疲れ様でした。皆様の益々のご活躍を祈念し、これからはOB・OGとしてまたお目にかかれます日を楽しみにいたしております。

事務局 神家満 由紀 小湊 裕

更新: 2020/3/8 日曜日 0:38:23